毎日たくさんのメールが届く。
一日平均50通は超えている。
3桁の日もある。
迷惑メールやお店からの勧誘メールもある。
これは困ったものだがどうしようもない。
題名で確認できたらすぐ削除するようにしている。
いくつかの団体の役員をやっているのでその関係のものが一番多い。
ホームページからもメールを送信できるようになっているので講演や授業依頼のメー
ルも届く。
先輩、仲間、友人からのものもある。
アドレスはオープンにしているので一般市民の方からの応援メールも届いたりする。
日本中、たまには国外からも届く。
見えない僕がこうしてメールが使えるのはパソコンのお陰だ。
この道具がなかったら生活すべてが変わっていただろう。
仕事もできなかったのかもしれない。
化学技術の発展がいろいろな人達の幸せにつながっていくのは素晴らしいことだ。
最近のアイフォンの進歩などもまた新しい時代につながっていくのだろう。
先日届いたメールに先輩からのものもあった。
年に一度くらい、忘れた頃に届けてくださる。
彼女は僕より少しお姉さんだが視覚障害者歴はまだ5年だ。
視覚障害の悲しさと悔しさの中にいた彼女はいろいろな人に巡り合い、一歩ずつ進ん
でいかれた。
その道程で僕も出会った。
訓練を受けられ、日常生活のノウハウ、好きな読書、取り戻された。
今は訓練の中で習得された織物を趣味にしておられるらしい。
淡々と綴られた文章には穏やかな力が感じられた。
目が見えていた頃と同じように、彼女らしく生きていこうとしておられるのが伝わっ
てきた。
残された光がなくなってしまうかもしれないという恐怖を感じながらも、
前を向いて生きていこうとする人間の生命力があった。
メールは「どうぞどうぞお健やかに ご機嫌よう」
と結ばれていた。
読み終えた僕自身の心に力がうまれるのを感じた。
秋空のような気持ちになった。
苦悩を乗り越えた言葉は誰かの力になれることがある。
人間っていいな。
(2020年10月6日)