高校の補講を4時限続けてやった。
さすがに最後はちょっと疲れていた。
授業を受けていた女子高生がバス停までサポートしてくれた。
サポートは初めてとのことで緊張が伝わってきた。
バス停に着いて感謝を伝えた。
「どこかで見かけたら、また手伝ってね。」
「はい。」
彼女ははっきりとした声で答えてくれた。
来年の春、卒業と同時に海外に留学するらしい。
夢がキラキラと輝いていた。
そして、それがコロナでどうなるかという不安も垣間見えた。
時代を感じながら彼女と別れた。
目的のバスがきた。
声をだしながら乗車した。
「どこか空いていますか?」
返事はなかった。
始発から二つ目のバス停だからきっとどこかは空いているだろうと思って出した声だ
った。
30分ほど立ったまま過ごした。
暑さと疲れが淋しい気分を倍増させていた。
「お座りになられますか?」
突然、老婦人の声がした。
斜め後ろからだった。
「ありがとうございます。」
僕はしっかりと感謝を伝えた。
立っている間にバスはいくつもの停留所に停車した。
かなりの乗降客が僕の傍を通り抜けた。
僕の白杖に気づいた人もおられるだろう。
ただ、見えないから空席が探せないということまでは気づかないのだ。
僕が見えている頃そうだったように。
それでも老婦人のように気づいてくださる人もたまにはいる。
個人の想像力に任せてもそんなにうまくはいかない。
こうして当事者として活動することはやはりとても大切なことなのだ。
女子高生の返事の声が蘇った。
また明日も頑張ろう。
(2020年8月18日)