団地の前の道は人通りも少ない。
バス停の手前で折り返せば遭遇する人数は一桁ですむ。
僕の散歩コースになっている。
自転車だけには気をつけて歩いている。
非常事態宣言の後、通行人も自転車も少なくなった。
社会全体が不要不急の外出を自粛しているということだろう。
僕も散歩は30分程度と決めている。
今日も散歩していたら、後ろから自転車の微かな音が聞こえた。
僕は立ち止って自転車が通り過ぎるのを待った。
「松永さーん、頑張ってねー。」
自転車の人はそう言いながら横を通り過ぎていった。
「ありがとうございまーす。」
僕は咄嗟に大きな声で返事をした。
ただそれだけのことをとてもうれしく感じた。
その人が誰なのか僕は分かっていない。
でも、頑張れよとおっしゃってくださった。
人間同士が交わす言葉の大切さを再認識した。
何気ない挨拶が素敵なんだと痛感した。
当たり前ではなくなって当たり前が見えてくる。
今感じることをしっかりと憶えておきたい。
当たり前になった時、きっと宝物になる。
(2020年5月4日)