突然の電話は懐かしい声だった。
彼女は京都市内の大学で社会福祉を学んだ。
学生時代に受講してくれた同行援護の講座で僕と知り合ったのだ。
卒業後は故郷に帰省したので会う機会もなくなった。
電話口の声は変わっていなかった。
口数の少なさも同じだった。
「わかめのふりかけを少し送りました。私の好物なんです。」
理由も経緯も言葉にはしなかったが十分伝わってきた。
彼女の故郷は海の近くだった。
コロナの影響で活動ができなくなっている僕を思いやってくれたのだろう。
電話を切ってからぼんやりとやさしい時間が流れた。
少年時代に海辺でワカメを取っていたことを思い出した。
春先だったような気がする。
薄灰色の波打ち際にワカメが流れてきているのだ。
漁師さん達が船でワカメを取った際の一部だ。
持ち帰って縄にくくりつけて干していた。
それがお味噌汁の具になったりしたのだ。
干したワカメの映像までが蘇った。
潮風が薫ような気になった。
(2020年4月22日)