白杖でバス停の点字ブロックを探した。
僕はその上に乗って深呼吸をした。
のどかな光を顔に当たるぬくもりで感じていた。
そよ風さえものどかだった。
「何番に乗るの?」
突然、少し離れたところから声がした。
バス停の待合の椅子に座っていたおばあちゃんだった。
横に座るように勧められたが、立ったままで会話を続けた。
彼女は最近膝が痛くて出かけるのがおっくうになったことなどを話してくださった。
話の途中にバスが近づくと、その行先と番号をしっかり教えてくださった。
それから、どこの病院が新設だとか話を続けられた。
風が気持ちいいとかの話題もあった。
「ブゥー。」
突然、でも確かに聞こえた。
「ごめんごめん。聞こえてしもたなぁ。
年取るとお尻までいうこときかんなぁ。」
おばあさんのおならだった。
「春だからいいですよ。」
僕は咄嗟に訳の分からない返事をした。
「そうかぁ。春やしなぁ。」
おばあさんも何となく納得されたようだった。
僕は心の底からのどかさを感じてうれしくなった。
(2020年2月20日)