講師陣は愛媛、大阪、京都、埼玉、東京から集合した。
受講生は鹿児島からも北海道からも、日本の各地から参加してくださった。
同行援護を勉強するための当事者対象の研修会が東京で開催されたのだ。
同行援護というのは視覚障害者にとってとても大切な制度だ。
同行援護の資格を取得したガイドヘルパーさん達が視覚障害者の外出をサポートして
くださる。
ガイドヘルパーさんのサポートによって安心して外出ができるのだ。
ガイドヘルパーさんがおられなかったら、買い物も通院もままならないという方もた
くさんおられる。
とにかく、視覚障害者にとってはとても大切な制度ということになる。
それを学ぼうという当事者の方々のモチベーションは高い。
僕は講師役なのだが、教えることより教えられることの方が多い。
受講生の中には元々聴覚障害でありながら視覚障害になってしまったという盲ろうの
女性がおられた。
彼女には盲ろう者通訳・介助員という専門家の方が同行してサポートしてくださって
いた。
僕達が話したことを彼女の微かに見える目の前で手話をされたり、彼女がその手話を
触って確認したりして伝え合うのだ。
通訳の方は彼女が少しでも見えやすいようにわざと黒い上着を着ておられた。
僕は彼女に挨拶をした。
それから握手を求めた。
僕達はしっかりと手を握り合ってお互いを確認した。
「頑張ります。」
通訳・介助員の方が彼女の言葉を僕に伝えてくださった。
それから、彼女の笑顔を教えてくださった。
それを知った僕も笑顔が弾けた。
見えない聞こえない、イメージだけだと大変さを先に思ってしまう。
そして実際に大変なことなのかもしれない。
ついついお気の毒にとか可哀そうという感情につながりやすい。
ただ、現実に生きている本人に会えば、その命のきらめきの方がはるかに大きいこと
に気づく。
そしてその気づきはこちらの幸せ感にもつながり生きる力にも変化していくのだ。
彼女の笑顔に、そしてその笑顔をさりげなく会場に溶け込ませてくださった関係者の
皆様に心から感謝したい。
(2020年2月15日)