僕の目の前は色で例えるなら灰色一色の状態だ。
朝でも夜でも変化はない。
季節によっても変化はない。
その中を白杖を左右に振って歩いている。
不思議な感覚なのだろうが、もうすっかり慣れてしまった。
変化のない画像の中を歩くのはとにかく退屈だ。
よく歩く地元の道もついこの前まではそうだった。
ところが最近はその場所に近づくと少しうれしくなる。
ガイドさんが偶然教えてくださったのだ。
この季節、そこみはピンク色の寒椿が咲いているのだ。
冷たい空気の中でそっと咲いている姿は健気で愛らしい。
見えていないはずの僕の心までをやさしくしてくれる。
存在自体に力があるのだろう。
素敵だなと感じてしまう。
今度生まれてくる時は道端の一輪の花もいいな。
白杖の人が近くを通ったらそっと応援してあげよう。
(2020年1月13日)