教頭先生と担当の先生が最寄り駅まで車で送ってくださった。
生徒達は落ち葉の掃除をしていた。
その中を車は動き出した。
どこの道をどう通ったのかは分からない。
会話の中に加茂街道というワードが出てきた。
その辺りを通ったのだろう。
ふと懐かしい映像が蘇った。
見える頃、北大路橋から加茂川の西側の堤防を数えきれないくらい歩いた。
春夏秋冬歩いた。
加茂川の流れも北山の風景も大好きだった。
特に桜の季節はわざわざ足を運んだ。
桜街道と勝手に名付けていた。
紅葉の中を車は走っていたはずだが、
僕の頭の中では桜が満開になっていた。
青空に映えて美しかった。
「忘れられない景色ってありますか?」
講演の後に中学生から出た質問を思い出した。
そんな質問が出る空気になったことだけで僕は満足していた。
見えない悲しさを消し去ることはできない。
見えない悔しさを忘れることも無理だ。
でも、人間同士の交わりがふと幸せを運んでくることもある。
眠っていた桜街道が見事に蘇った。
少年少女達にそっと感謝した。
この道はきっと未来につながって行くだろう。
(2019年11月27日)