故郷の鹿児島県に帰省した時だけ食べるお魚がある。
キビナゴだ。
塩焼きも美味しいが酢味噌で食べるお刺身は最高だ。
今回も2度食べた。
食べる時、必ずその姿を思い出す。
人差し指ほどの長さだろうか、太さは指よりは細い。
銀色と薄青色の縦じまが輝いている。
はっきりと思い出す。
子供の頃によく見ていたのだろう。
暮らしの中にその姿があったのだ。
子供の頃は美しいなどと思ったことはなかった。
大人になってからそう思うようになった。
美の概念も変化していくのだ。
当て字なのだろうが「貴美女児」と書くのを知ったのは故郷を離れてからだった。
文字の確かさに感動したのを憶えている。
キビナゴが何万匹の群れをなして泳ぐ姿は想像しただけで胸がときめく。
いつか見える日がきたら見てみたいと素直に思ってしまう。
素直に思えるくらい美しいということなのだろう。
そして、素直に思っている自分自身を感じた時、何故かちょっとうれしくなる。
(2019年10月24日)