注文したぬか漬けがテーブルに置かれる。
微かな香りが食欲をくすぐる。
大根ときゅうりと人参と3種類をゆっくりと味わう。
塩辛いこともなく酸味もほどよく絶妙の味だ。
歯ごたえや食感で素材の良さも伝わってくる。
料理人は堅物で偏屈な男だから素材にもとことんこだわっているのだろう。
普通は料理の端っこに脇役としてあるのだが、
ここのぬか漬けはそれだけで十分主役となっている。
京都だけではなく旅先のいろいろなところでもぬか漬けを口にするのだが、
このお店より旨いと思うのにはまだ出会えない。
料理人は高校時代の友人だからひいき目なのかと自問自答してみたがそうではない。
純粋に旨い。
口に入れて幸せになるものをご馳走というのだとしたら、
ここのぬか漬けは間違いなく一流のご馳走だ。
器も料理の見た目も分からない僕は嗅覚と味覚だけが勝負だ。
その僕が参ってしまう。
30年という時間は料理人の腕もぬか床も熟成させてきたのかもしれない。
鹿児島県薩摩川内市、割烹なかうち。
近くにいらしたら、是非召し上がってみてください。
(2019年10月19日)