妹はチューブにつながれた姉の前で立ちすくんだ。
姉はベッドの上で眠り続けていた。
命だけは助けてくださいと妹は必死でドクターに訴えた。
そしてただ神様に祈った。
祈りは通じた。
姉の命は助かった。
でも、光は失った。
神様に約束した通り、妹は姉の目になった。
二人は一緒に暮らしている。
一緒に俳句を学び、一緒に大正琴を楽しんでいるとのことだった。
時にはケンカもすると妹は照れながら話した。
姉妹が逆転したようだと姉がつぶやいた。
僕はふとお二人の両親を思い浮かべた。
娘が失明したと知ったら、きっと悲しまれるだろう。
でも、その後の娘達を知ったら笑顔になられるに違いない。
我が子を誇りと感じられるかもしれない。
僕の問いかけに姉ははっきりと答えた。
「今、幸せです。」
隣で妹が微笑んだ。
障害って何なのだろう。
家族って何なのだろう。
生きるってどういうことなのだろう。
深いやさしさに包まれながら福知山を後にした。
(2019年9月8日)