グラウンドの端っこにコンクリートでできた小屋があった。
畳二畳程度の広さの部屋がラグビー部の部室だった。
臭くて汚い部室だった。
でもその部屋が好きだった。
「おまえはゴールポストの下に何を見つけたのか?」
落書きが胸を熱くした。
いつ誰が書いたかも分からなかった。
入部した時にはそこにあったのだから先輩が書かれたのだろう。
練習ジャージに着替えてからそれを黙読してグラウンドに出た。
その時の風景をはっきりと憶えている。
どこにでもあるようなただのグラウンド。
土があって空があってゴールポストがあった。
いろいろな思い出がセピア色になってしまったのに、
その風景は原色のまま蘇る。
愛してしまっていたのだろう。
ゴールポストの下に何も見つけられずにここまできてしまった。
探さなくていいのだと思えるようになった。
でももしできることならば、
もう一度、グラウンドを全力で走ってみたい。
ボールを抱きしめながら走ってみたい。
(2019年8月29日)