電車は混んでいたので僕と友人は通路まで移動した。
僕は二人座りのシートの角にある取っ手を持って立っていた。
窓際が少女で通路側がお母さんだった。
しばらくして少女は僕に気づいた。
二人は席を僕達に譲ってくれた。
「白い棒を持った人は目が見えない人って学校で教えてもらったの。」
少女は自慢気にお母さんに説明した。
お母さんは気づくのが遅れたことを僕に謝って、気づいた娘にお礼を伝えていた。
それだけで素敵な親子だなと感じた。
当たり前のように僕と少女の間に会話が生まれた。
少女は点字や盲導犬の話を僕にしてくれた。
僕は触針の腕時計を見せたりした。
点字の付いた名刺もプレゼントした。
少女はうれしそうに指で触っていた。
あっという間に僕達は目的の駅に着いた。
僕達は親子にお礼を伝えて電車を降りた。
少女がどんな格好だったかなどを友人が細かに説明してくれた。
赤いハンドバッグが似合っていたそうだ。
そして満面の笑みだったと教えてくれた。
やさしさに包まれた時間が僕の心の中で絵日記になった。
今年の夏の大きな思い出になるのを自覚した。
(2019年8月15日)