ガイドヘルパーのスキルアップ研修が開催された。
僕も彼女もその当事者講師だった。
研修が始まる前のわずかな時間を見つけて、彼女は僕に小さな紙袋を渡してくださっ
た。
「この前のお礼ね。」
最初は何のことか分からなかった。
一か月ほど前にこの研修の打ち合わせがあった。
その時彼女は少しのどの調子が悪そうだった。
僕はいつも持ち歩いているミンティアを彼女に渡した。
数粒齧ると清涼感が口中に広がるお菓子だ。
その時のお礼にとの説明だった。
ささやかなお菓子でわざわざお礼を受け取るようなものではない。
「お煎餅。海苔巻きではないけれどね。」
彼女は笑いながら手渡してくださった。
僕はその意味がすぐに分かった。
何の躊躇もなく頂いた。
彼女は僕のブログを時々読んでくださっている。
以前、お煎餅が好きなことを書いたことがある。
彼女はそれを思い出して準備してくださったのだ。
彼女らしい細やかな心遣いがほのぼのとうれしかった。
彼女がたくさんの時間を使って活動されているのは知っている。
一か月の半分くらいはライトハウスに来ておられるのかもしれない。
仲間のために地域のために、そして未来のために。
日々の活動の中でこうして素敵な仲間と出会う。
その姿に自分自身が励まされる。
視覚障害者にはなりたくなかったとそれぞれが思っている。
でも、そんなこととは関係なく、豊かな人生を生きていきたいと思っている。
お互いの顔さえ見えない僕達は笑顔で同じ未来を見つめている。
帰宅して味わったお煎餅は格別の味だった。
(2019年8月11日)