見えなくなってからひまわりがとても好きになった。
理由は自分でも分らない。
触った時に映像が一瞬で蘇るからかもしれない。
葉っぱの大きさ、太い茎にある産毛の感じ、背の高さ、まっ黄色な花弁、種になる部
分のザラザラ感、すべてが愛おしく感じてしまう。
そしてそれが夏の青空にとてもよく似合う。
笑顔のようだ。
青春時代、リュックサックを背負ってヨーロッパを旅したことがある。
お金はなかったけど時間はあった。
貧しさを貧しさと感じていない頃だった。
心のおもむくままに時を過ごした。
パンをかじって野宿をしながらの旅だった。
いきさつは忘れてしまったがアムステルダムにあるゴッホ美術館を訪ねた。
フィンセント・ファン・ゴッホの描いた「ひまわり」。
その絵の前で立ちすくんだ。
思い出がいつか宝物になることをその時の僕はまだ知らなかった。
切り取られた思い出が夏に溶けていく。
今年はまだひまわりを触っていない。
どこかのひまわり畑に行ってみたくなった。
(2019年8月7日)