バスも電車も冷房が効いている。
建物の中も涼しい。
問題は移動中だ。
暑さが尋常ではない。
37度ということは体温よりも高いということだ。
灼熱を感じながら歩く。
さすがにここまでくるとセミ達も押し黙ったままだ。
僕の心も無言で歩く。
思考が停止しているような状態だ。
ただ、そんな中でも右手だけは頑張ってくれている。
白杖をしっかりと握っている。
歩行のリズムに合わせて左右に規則的に動かす。
無意識の中で動かしているのだから我ながら凄いと思う。
進む道を白杖で見ているのだろうな。
初めて手にした時は悲しい道具に思えた。
それが今では大切な存在となった。
道具が身体の一部になったということだろう。
いつでもどこでも一緒なのだ。
ありがとう、白杖。
(2019年8月5日)