数年ぶりに偶然バスの中で出会った。
小学校5年生の一人息子の成長をうれしそうに話してくれた。
夏休みが始まって大変になるとも話してくれた。
普通のお母さんの姿があった。
バスを降りて駅までのサポートを依頼した。
わずかな距離だったが僕はわざと彼女に依頼した。
彼女と歩きたいと思ったのだ。
「素肌でごめんなさい。」
彼女はちょっと照れながら肘を持たせてくれた。
彼女と歩くのはこれで何回目だろうか。
10回にはならないのかもしれない。
初めて一緒に歩いた日を僕ははっきりと憶えている。
22年前、僕が初めて参加した視覚障害者協会のイベントだった。
彼女はボランティアのお母さんに連れられて参加していた。
小学校5年生か6年生だったと思う。
僕自身もまだ手引かれることに慣れていなくてドキドキしていた。
少女はもっとドキドキだっただろう。
「僕が初めて手引きしてもらった小学生だからね。」
僕は不思議な喜びを伝えた。
「息子は生まれてすぐに松永さんに抱っこしてもらったんだから、
私よりデビューが早いですよ。」
彼女はうれしそうに笑った。
夏休みのうちに息子と歩きたいとふと思った。
三世代でサポートしてもらうということになる。
(2019年7月25日)