ラジオから高校時代によく聞いた曲が流れた。
部屋の片付けをしていた手が止った。
昨年この世を去ったガールフレンドを思い出した。
学校帰りに一緒に浜辺を歩いた。
彼女は桜貝を拾って僕の手のひらに載せてくれた。
淡い薄桃色を憶えている。
高校を卒業して違う土地でそれぞれの道を歩いた。
30歳くらいに再会した時、彼女はうれしそうに赤ちゃんを抱っこしていた。
会ったのはそれが最後だった。
それからは賀状のやりとりくらいだった。
老後に再会したいと思っていた一人だった。
突然届いた訃報の葉書の喪主はあの時の赤ちゃんだった。
時の流れだけを感じた。
僕の時間はあとどれだけあるのだろうとふと思った。
僕にできることは何なのだろう。
僕がしなければならないことは何なのだろう。
僕がしたいことは何なのだろう。
出ない答えを探しながら、それが生きていくということなのだろうか。
思い出の中のガールフレンドがニコッと笑った。
僕も笑い返した。
(2019年6月15日)