慣れているはずの校内でも迷子になることがある。
それが見えないということなのだろう。
ウロウロしているのに気づいた女子学生達が声をかけてくれた。
「どこに行くのですか?」
僕はトイレに行きたいことを伝えた。
昨年僕の授業を受けていた学生達だったので、
視覚障害者の手引きの方法はマスターしてくれていた。
スマートにサポートしてトイレまで連れていってくれた。
僕はお礼を言ってトイレのドアを開けて中に入った。
外で先ほどの学生達の声が聞こえた。
電気をつけ忘れたという内容だった。
僕はドアを開けて彼女達の声の方に向いた。
そして自分の目を指さしながら言った。
「大丈夫。電機は要らない。」
ほんの少し間が空いてから笑い声が聞こえた。
「分かりました。ごゆっくり。」
僕も笑った。
ほのぼのとした空気が流れた。
こんな感じ、いいなと思った。
(2019年4月26日)