講演のお礼の電話だった。
彼女は5年前くらいにも僕の話を聞いたと教えてくださった。
その頃と比べれば、スマートフォンの話題が増えていたとのことだった。
話す内容も順番も少しずつ変えてきた。
限られた時間に何をどうやって伝えるか、試行錯誤の連続だった。
それは今も続いている。
視覚障害者数は全国で34万人、その中で全盲は4万人。
まさにマイノリティだ。
電車の中に優先座席があったとしても、
それを見つけられないのが見えないということだ。
そんなささやかな事実をしっかりと伝えていくのが当事者の役目だと思っている。
見える人も見えない人も見えにくい人も、皆が笑顔で参加できる社会。
目標はまだまだ先にある。
でも、5年前を憶えていてくださったということは、
ほんの少し、そこに近づけたということの証だろう。
ほんの少し、ほんの少し、それがいつかきっと力になる。
憶えていてくださって、またお招きしてくださったことに心から感謝した。
(2019年3月12日)