半日以上降り続いた。
大雨ではなかったけどしとしとと降り続いた。
しとしとと冬が溶けていった。
なんとなくだけど春が生まれている気がした。
風が教えてくれた。
空気が教えてくれた。
光が教えてくれた。
白杖を左右に振って歩きながら自然と笑顔が生まれた。
足元で生まれたての春が微笑んだ。
車の運転ができない僕は歩くことが多い。
歩けば風を感じる。
匂いに気づく。
光を浴びる。
フェラーリの乗り心地よりも豊かな時間を味わっているのかもしれない。
なんて思いながら歩いたら、
負け惜しみに気づいてちょっと悲しくなった。
足元でまた春が微笑んだ。
いや、春が声を出して笑った。
(2019年3月6日)