今年も友人から春姫が届いた。
春姫は鹿児島県の南薩摩地方で生産されているキンカンだ。
一定の大きさと糖度を兼ね備えていて綺麗なオレンジ色一色らしい。
水洗いしてそのまま丸ごと頬張る。
甘さが口中に広がる。
甘さに溶け込んで隠れていた早春の微かな苦みに気づく。
苦みが春の味なのだということを知る。
水と土と空気とお日様の合作だ。
自然というシェフの腕前に感動してしまう。
一年という時間の中でこの時期にだけ出回る。
ほんの一瞬だ。
口の中で生まれたての春が命を主張している。
見えるとか見えないとかは何も影響しない。
その命を僕の命が愛おしむ。
生きているってやっぱり素晴らしい。
(2019年2月15日)