家族や友達の顔は思い出せるのに自分の顔は思い出せない。
アルバムにあった子供の頃の写真を朧げに憶えているくらいだ。
成人してからは自分の顔はあまり見ていなかったということだろう。
女性のように鏡も見なかった。
見えている頃に男前とかイケメンと言われたことは一度もなかった。
そんな顔にあまり興味もなかったのだろう。
よく着ていたポロシャツなどのデザインや色合いなどはしっかりと記憶している。
好きだったからだろう。
60歳を超えてから風貌がどう変化しているのか少しは興味がある。
興味ではなくて不安なのかもしれない。
シルバーグレーのおじいさん、素敵だと思っていた。
残念ながら僕はハゲるタイプだ。
シャンプーしながら指先で実感している。
先日、中学校の福祉授業で生徒から質問を受けた。
「もしいつか見えるようになったら、自分の顔を見たいですか?」
咄嗟に答えられなかった。
20年も自分の顔を見ていないのだから仕方ない。
見えた方がいいものとそうでないものとがあるような気もする。
今日、散髪屋さんに行った。
60歳以上は200円のシルバー割引のある店だ。
「まだ60歳ではないですね。」
レジのおねえさんが自信あり気におっしゃった。
一瞬ニヤリとしたけれどしっかりと主張してしまった。
「60歳を超えています!」
あーあ、どんな顔で言っていたのかな。
(2018年12月10日)