改札口を出たところで小学生くらいの少年は僕に声をかけた。
「何かお手伝いすることはありますか?」
その口調には緊張感があった。
僕はいつもの慣れた道ではあったけれど少年の申し出を受けることにした。
肘を持たせてもらってわざとゆっくりと歩いた。
どこかの小学校で出会った少年かと思いながら尋ねてみた。
そうではなかった。
学校で視覚障害について勉強したらしかった。
4年生の少年は自分の判断で見も知らぬ僕に声をかけてくれたのだった。
「学校は楽しい?」
「運動会は終わったの?」
「そろそろイチョウの葉も黄色くなってきたんじゃない?」
少年は「はい。」とだけ返事をしていた。
身体もこわばっているようだった。
歩道橋の階段までのわずか50メートルくらいを僕達はのんびりと歩いた。
階段のところで僕は少年に感謝を伝えた。
「ここで大丈夫だよ。君のお陰で安心して歩けたよ。ありがとう。」
「どういたしまして。」
少年は初めて笑った。
こんな感じで少しずつ未来が輝いていくのだろう。
少年の笑顔を感じながら未来を見たいと思った。
長生きしたいなと思った。
(2018年11月13日)