東京駅新幹線中央口の駅員さんは僕のチケットを見ながら、
京都駅乗り換えで桂川駅下車ということを確認された。
それから駅員室に入って連絡をされているようだった。
しばらくすると別の係員の方がこられた。
彼女は慣れた感じで僕を手引きして歩き始めた。
エスカレーターは大丈夫かと質問されたので何でも大丈夫と答えた。
エスカレーターを上りいくつかの階段も上り長いホームを歩いてのぞみ号の前まで着
いた。
まだドアは開いていなかった。
わずかな時間、僕達はホームで待機した。
「京都までご旅行ですか?」
彼女はうらやましそうに尋ねたが仕事の帰りと知って「お疲れ様です。」と笑った。
僕も「お互い様です。」と笑った。
やがてドアが開いたので彼女は僕を指定席まで誘導した。
「新幹線の乗務員に引き継いでおきます。お気をつけてお帰りください。」
それだけ言うと爽やかに立ち去った。
京都までの車中、僕はパソコンを出して溜まっていた仕事をした。
あっという間の2時間だった。
のぞみ号が京都駅に到着する前に乗務員の方がきてデッキまで誘導してくださった。
京都駅には京都駅の新幹線の駅員さんが待機していてくださって在来線の係員の方に
引き継ぎをされた。
引き継ぎされた駅員さんは大阪方面行の乗り場まで移動して僕を電車に乗車させてく
ださった。
桂川駅のホームには桂川駅の駅員さんが待機していてくださった。
僕を見つけるなり「まず荷物を持ちましょう。」と僕の持っていた紙袋を預かってく
ださった。
僕は電車の最後尾の車掌さんの近くに乗車していたのでホームを端から歩く感じだっ
た。
長い距離を駅員さんはゆっくりと歩かれた。
「どこまでご案内すればいいですか?」
僕はタクシー乗り場までお願いした。
「おトイレは大丈夫ですか?」
彼は言葉数は少なかったけれどまさに心のこもった対応をしておられた。
タクシー乗り場に着いた。
「たったこれだけの荷物なのですが、持ってくださったのでとても歩きやすかったで
す。
トイレも尋ねてくださって安心でした。
本当にありがとうございました。」
僕はしっかりと頭を下げた。
「そんな風に言ってもらえるとこちらもうれしいです。
荷物はタクシーに座られてからお渡ししますね。」
駅員さんは笑顔で話しておられた。
「お世話になりました。ありがとうございました。」
僕の言葉が終わってからタクシーのドアは閉まった。
目が見えたら何事もなく、ひょっとしたら誰とも会話もせずに一人で京都まで帰って
これただろう。
見えないから6名の駅員さんのお世話になった。
そして幸せな気持ちになった。
(2018年11月8日)