目が見えづらくなってきた若者からメールで相談を受けた。
僕はすぐに返信をしたがメールの不具合で届かなかった。
彼がどこに住んでいるのかは分からないが、
年齢は20歳を超えていると書いてあった。
家族が勧めてくれても白杖を持つことができないとの内容だった。
僕は自分が初めて白杖を持った頃を思い出した。
20年程前、ライトハウスで白杖での歩行訓練を受けたのがきっかけとなった。
最初はその姿を受け入れることができなかった。
他人の目が気になった。
知り合いに見られたくないとも思った。
それは僕だけではなかった。
とりあえず訓練を受けるけれど、少しでも見えるうちは使わない。
夜だけしか使わない。
自宅の最寄り駅までたどり着いたら、
白杖を折りたたんでリュックサックにしまい、見えるふりをして歩く。
40名ほどの訓練生の中で多くの人達が白杖を拒んだようだった。
20年の間に社会は少し変わった。
ハードルは少し低くなったのかもしれない。
街を歩けば、白杖の人とすれ違うことも増えた。
視覚障害者の数が増えたわけではない。
持ちやすい雰囲気になってきたのだろう。
でもまだまだ一部だし地域差も大きい。
僕達の問題ではなくてそれを受け入れる社会の側の問題なのだろう。
簡単には変わらない。
僕が後輩に言えることって少ししかない。
とりあえず、持てば安全度は高まります。
周囲が気にかけてくれます。
技術を習得すれば、歩行能力も高まり活動範囲も広がります。
そして僕の周囲には白杖を持って素敵に生きている人達がたくさんいます。
かっこいいと言われる人もいます。
可愛いと言われる人もいます。
そして使っている人達は手離せない道具となっています。
白杖に感謝さえしています。
僕も感謝しています。
白杖を持っての人生、それなりの幸せもありますよ。
その人次第だと思います。
(2018年10月15日)