「僕がまだ見えていた頃、
障害のある方に声をかけて
お手伝いする勇気はありませんでした。
こうして見えない世界で生きるようになって、
サポートの声に本当に助けられています。
そしてその声で心までが幸せになったりもします。
これからも困っていそうな僕達の仲間を見かけたら、
今日のように声をかけてあげてくださいね。
宜しくお願い致します。」
僕の上着の胸ポケットにはいつもこの「ありがとうカード」が入っている。
お手伝いをしてもらった時などできるだけ渡したいと思っている。
ただ渡すタイミングもあるし結構難しい。
電車の中で座席に案内してもらった時などは、
座った時点でもうその方を見失っていることが多い。
音と雰囲気だけの確認なのだから仕方ない。
先日は一日で4枚のありがとうカードを渡せた。
そんな日は僕自身もいい気分になっている。
数日経ってからふと思い出した。
ドラッグストアで買い物をした時、割引券を同じポケットに入れた。
ありがとうカードとほとんど同じサイズの割引券だった。
割引券やポイントカード大好きの僕は専用のカード入れを持っていて、
だいたい直後にそこに片付ける。
その日は急いでいてついポケットに入れてしまったのだ。
そして忘れてしまっていた。
あの割引券はどこにいったのだろう。
「ありがとうの気持ちです。受け取ってください。」
そう言いながら誰かに渡してしまったに違いない。
大失敗をしたことになる。
恥ずかしいなぁ。
10%の割引券で喜んでくださったとは思えない。
変な人って思われただろうな。
今度出会ってももうサポートはしてくださらないかもしれない。
どんなに急いでいても割引券を胸ポケットに入れるのはもうやめよう。
必ず確認をするようにしよう。
割引券をもらうのをやめようと思わないところが僕のいいところです。
変な人といううわさが広がらないように祈るだけです。
(2018年10月7日)