彼女は突然道の端に僕を誘導した。
それから僕を屈ませた。
僕は彼女の言うがままに手を伸ばした。
「もうちょっと伸ばしてください。」
僕は指先まで伸ばした。
僕の指先にコスモスの花弁が触れた。
「ピンクの花弁ですよ。」
彼女はうれしそうに笑った。
僕も笑った。
白も紫もあった。
濃いピンクも薄いピンクもあった。
見えない僕を色々なコスモスが取り囲んだ。
僕は葉っぱも触った。
もう20年も見ていないコスモスの花がまるでさっき見たかのように蘇った。
僕の記憶力とか想像力とかではない。
僕に教えてあげようとする彼女の思いのせいだろう。
僕に見せてあげたいと願う彼女のやさしさのせいだろう。
僕はただうれしいと思った。
小さい秋見つけた。
小さい秋見つけた。
小さい幸せ見つけた。
僕の心が秋色に染まった。
(2018年9月28日)