仏花で飾られた仏壇の前で正座する。
白檀の線香の香りが鼻腔から脳に流れてくる。
鐘をたたき静かに合掌する。
目を開けても閉じても変化はないのに何故か自然に目を閉じる。
父ちゃんの顔が浮かぶ。
祖父ちゃんの顔も祖母ちゃんの顔も浮かぶ。
自分の顔は忘れたのに不思議な気がする。
厳しかった父ちゃんが微笑んでくれている。
それだけで僕はうれしくなる。
正月には神社に参拝しクリスマスには教会にも行ったりする。
仏教徒というほどの自覚もない。
信仰の中にいる人に会うと素敵だと思う。
でも自分自身には特別な宗教心はない。
命が尽きたら土に帰っていくのだろうとどこかで思っている。
それでも父ちゃんの月命日やお盆やお彼岸には必ず花を供え掌を合わす。
ただの慣例行事というようなものでもない気もする。
掌を合わすと心が静かに呼吸し感謝の気持ちが膨らむのは間違いない。
感謝は突き詰めれば自分の生命への感謝なのかもしれない。
「また明日も与えられた命のままに生きていけますように。」
祈りを終えて目を開く。
(2018年9月24日)