授業の始まる前に少女は僕の首にマイクをかけてくれた。
毎年この小学校にお招き頂いているのだがここには難聴学級がある。
マイクは特別なもので僕の声が彼女の補聴器にだけ届くということになっている。
これまではそうだった。
学びやすい環境になってきているのだと驚いたものだ。
ところが今年のマイクはまた進化していた。
彼女はタブレットを持っていたが、
僕の話した言葉がマイクを通して文字に変換されるという仕組みだった。
「UDトーク」というアプリがあって、
完璧とまではいかないが十分に補助となるとのことだった。
僕のスマートフォンには「OCR」というアプリがはいっている。
撮影した文字を読んでくれるのだ。
頂いた名刺、郵便物、結構しっかりと読んでくれる。
助かっている。
「TapTapSee」というアプリも時々使っている。
写真を撮影するとその画像を説明してくれるのだ。
「黒い椅子に座った白いドレスシャツの女性」というような感じだ。
スマートフォン自体が見えない人が使うことを想定して製品化されていて、
しかもこういうアプリが無料でダウンロードできるから驚く。
科学は日進月歩だ。
もうしばらくしたら、画像解析の精度も高くなるだろう。
「美人度82パーセント!」
と説明してくれる日も近いかもしれない。
そうすれば想像力は退化していくのかな。
知らない方が幸せってきっとあるのにな。
いやいや、科学の進歩の恩恵に与って感謝しています。
(2018年9月2日)