京都駅から乗車したバスはほぼ満員だった。
ボランティアさんは最後尾に空席を見つけて僕を案内してくれた。
そして僕を座らせるとそのままバックして降りていった。
わずかの時間の的確な対応だった。
座るとすぐに隣のご婦人が声をかけてくださった。
一部始終を見ておられたのだろう。
僕がまったく見えていないことを理解してくださったのだろう。
僕の手を取って前にあった手すりを触らせてくださった。
その何気ない所作が自然で美しく感じた。
僕は感謝を伝えながら京都在住の方か尋ねた。
箱根から茶道の研修に来ておられるとのことだった。
一泊二日で座禅もするとおっしゃった。
後期高齢者だとおっしゃっていたが、
言葉にも距離感にもそして所作にも品位があった。
外は記録的な暑さだったのだが、
僕達の空気は凛としていた。
四条大宮までのわずか20分程度の人生の交差、
豊かな気持ちになっていた。
こういうのを一期一会というのだろう。
見えない人生、見える人達よりもそのチャンスは多いのかもしれない。
(2018年8月7日)