丹波橋駅はよく利用する。
以前はサポーターと一緒の場合が多かったのだが最近は単独が多い。
近鉄丹波橋駅で電車を降りたらまず鳥の声を探す。
合成音の鳥の声が階段の上り口で定期的に鳴いてくれている。
その音に向かって点字ブロック沿いに歩く。
階段にたどり着くことができる。
階段を上ったら今度は改札機の音を探す。
駅構内の地図が頭に入っていないので音だけが頼りだ。
近鉄丹波橋駅から京阪丹波橋駅までの連絡通路は一本道だ。
上り下りの坂道ではあるが問題はない。
京阪丹波橋駅の構造は教えてもらったことはあるのだが記憶は定かではない。
結局毎回のように迷っている。
迷っている僕に気づいた駅員さんや通行人の方がサポートしてくださってなんとかな
っている。
それに味を占めている僕は記憶の努力を先延ばししてしまっている。
何とかなるさという姿勢は見えていた時も見えなくなってからも変わらない。
今日も又京阪丹波橋で迷ってしまった。
「松永先生、お久しぶりです。どうかなさったのですか?」
立ちすくんだ僕に声がかかった。
随分前の専門学校の教え子だった。
「深草方面のホームに行きたいけど分からなくなっているんだ。」
僕は迷子状態を説明した。
彼女は快くサポートを引き受けてくれた。
「私事ですが最近入籍しました。」
わずかの時間に近況と一緒に彼女は幸せをおすそ分けしてくれた。
僕もなんとなくうれしくなった。
帰宅したら彼女からメールが届いていた。
「先生が今もお元気そうで、その事が心から嬉しかったです!
今日の青空は柔らかで澄んだ青色をしていて、風に新緑がゆれて、
風に運ばれるように松永先生にお会いできて光栄でした。」
僕は笑顔になってコーヒーをすすった。
そして願った。
「末永くお幸せに!」
(2018年5月14日)