僕が支援しているジョンディーコンが6年間の小学校生活を終えた。
関係者や現地スタッフに手伝ってもらって家庭訪問することにした。
彼の家は港の近くのスラム街のような場所にあった。
人間同士がやっとすれ違えるくらいの路地の両側に小さな家が建ち並んでいた。
竹や廃材を利用して作られた家はまさに小屋のようだった。
それが30度の気温の中に密集していた。
野放しの鶏があちこちで鳴いていた。
独特の異臭が立ち込めていた。
僕はボランティアさんの手引きでやっと歩いた。
急な坂の手すりもない自然石と廃材の階段のような場所を幾度かよじ登った。
危険な場所では住民達が幾度も僕の身体を支えてくれた。
6人の家族が暮らす家は2畳の広さで窓もなかった。
全員は寝れないので道端で寝たりするとのことだった。
台所もトイレもなかった。
勉強机もなかった。
ジョンディーコンと彼のお父さんとお母さんが僕達を迎えてくれた。
笑顔だった。
ご両親は心のこもった感謝の思いを僕に伝えてくださった。
部屋には成績優秀でジョンディーコンが表彰されたメダルが飾ってあった。
「将来何になりたいの?」
僕はおとなしそうなジョンディーコンに尋ねた。
「ドクター。」
彼ははっきりと答えた。
堂々と答えた。
僕はうれしくなった。
その可能性がどれだけあるのか見当もつかない。
でも彼の夢がかなうように同じ地球人の僕はできることをやりたいと思った。
順調にいっても大学を卒業するのにあと10年かかる。
僕の生きていく目標がひとつ増えた。
僕は感謝しながらジョンディーコンと握手した。
(2018年4月8日)