講座の振り返りの時間に彼女は語った。
言葉の数は少なかった。
難病だった娘さんとの思い出の一場面だった。
10歳まで生きられなかった娘さんが彼女の心の中にいた。
天国の娘さんが彼女を見つめていた。
悲しみは少ない方がいい。
例えあっても小さい方がいい。
忘れられるものならきっとそうしたい。
時々悲し過ぎる経験をした人達と出会う。
僕には想像さえできないような悲しみだ。
胸が締め付けられるような思いになる。
ただその後ふと気づく。
悲しみはその人の心の中で変化している。
時間をかけて熟成していくのかもしれない。
悲しみを思い出す瞬間、その人は無意識にとてもやさしい人になっている。
あたたかな人になっている。
講座が終了して僕は彼女と握手をした。
僕達はともだちになった。
(2018年2月16日)