出かける前に携帯が鳴った。
急いで話をしたけれど時間がかかってしまった。
中学校での講演に行くための予定のバスには乗れなかった。
タクシーを呼ぼうか迷ったけど次のバスに乗ることにした。
この判断が間違っていたのだろう。
バスが桂駅に着いた時には間に合うかがとても不安になっていた。
僕はあせる気持ちを抑えながら歩き出した。
少しスピードが出てしまっていた。
駅の改札に向かう直前で女性とぶつかった。
その瞬間女性がおっしゃった。
「ぼぉっとしてしまっていました。すみません。」
素直な言葉だった。
急いでいた僕はそのまま返事だけして通り過ぎようとした。
その直後また別の人にぶつかりかけた。
連続なんて初めての経験だった。
ぶつかりかけた瞬間、さっきの女性が咄嗟に僕を支えてくださった。
その流れで僕は彼女のサポートで改札口へ向かうことになった。
「ぼぉっとしてしまっていました。」という彼女の再度の言葉。
「とっても急いでいるので助かります。」という僕の言葉。
僕達は改札口までのたった十数メートルを急ぎ足で歩いた。
「ごめんなさい」と「ありがとう」が一緒に歩いた。
他にも数個の会話があったような気がするが憶えてはいない。
とにかく僕はあせっていた。
点字ブロックのある改札口に着いた。
「気をつけて。」
彼女の言葉に僕の「ありがとう。」が重なった。
友達同士の笑顔が一瞬重なった。
結局関係者との待ち合わせ時間には遅れてしまったが講演には影響はなかった。
帰りはのんびり移動しながら朝の反省をした。
急いでいる時は躊躇せずにタクシーを使おう。
そして直後にもう一人の僕がささやいた。
タクシー代もかからなかったし彼女とも出会えたし、これでいいにしよう。
問題点は判断力ではなくて優柔不断な性格にあるのかもしれません。
とにかく緊張感を持って気をつけて歩きます!
(2017年12月12日)