久しぶりの鹿児島での休日、
ガールフレンド達は初めての海岸に案内してくれた。
空と海とが同じ色に見える穏かな薄雲りの日だった。
僕達は松林の自然歩道を波の音を聴きながら歩いた。
ガールフレンドは松ぼっくりを拾って僕の手に乗せてくれた。
時々トンビも鳴いてくれた。
1キロほど歩いて岩場の海岸の指定席にたどり着いた。
僕はしばらく一人にしてくれるように頼んだ。
そんなことさえもお願いできるというのは青春時代を同じ空間で過ごしたからだろう。
僕はしばらく海と対面した。
どれくらいの時間だったか判らない。
抜け殻のようになって佇んだ。
そこはコンサートホールのS席だった。
前から右から左から波の音が押し寄せた。
ボリュームもテンポも変化させながら続いた。
幸福感だけが僕を支配した。
僕は海を愛しているんだ。
包まれるってこんなにうれしいことなんだ。
第一楽章、第二楽章・・・。
自然のオーケストラだった。
ここにホットコーヒーさえあればもう何も要らないと思った。
来年もう一度連れて来てもらおう。
小さなテーブルとイスも車に積んでこよう。
次回は第三楽章から第七楽章までは聴きたいな。
その日まで頑張ろう。
頑張れそうな気になった。
(2017年11月26日)