「若い頃、困っておられるかもしれない白杖の人に援助の声をかけられなかった自分
を責めたことがあった。」
宇治市内の中学校、校長先生は自分の言葉で生徒に語りかけておられた。
嘘のない言葉が僕の胸にも沁みこんだ。
僕達はきっと未来を見つめて生きてきた。
それなりに一生懸命に生きてきた。
少しのやさしさも寛容さも持ち合わせていたと思う。
でも成し遂げたことよりも至らなかったことが多いことは判っている。
決して責任転嫁するつもりはないが、
そのいくつかは知る機会によるものだったのかもしれない。
その思いがこれからを生きる者達へのメッセージとなっているのだろう。
同世代の校長先生と僕は別れ際にハグをした。
男同士のハグだった。
翌日僕は600キロ南に移動していた。
そしてそこで10代の少女に尋ねられた。
「白杖の人のサポートを正しくできなかったかもしれないのですが・・・。」
少女は涙ぐんでいた。
美しい涙だった。
「そうして声をかけてくれたことが大切なことだと思うよ。ありがとう。」
僕は感謝を伝えた。
少女はきっとこの次にはもっとスマートなお手伝いができるだろう。
それは知る機会に出会ったからだ。
知る機会があるかないかで人生そのものが変化する。
知る機会に恵まれればそれぞれの人生はきっと豊かになる。
少女達が創ってくれる未来が楽しみだ。
(2017年11月22日)