代表として挨拶した高校の生徒会長は僕の講演を「松永ワールド」と表現した。
考えたことを素直な言葉で語った。
感じたことを堂々と僕に伝えた。
柔らかだった。
「楽しかったです。」
彼女は瑞々しい言葉で最後を締めくくった。
僕は白杖を左手に持ち替えて、頂いた花束を抱きかかえながら右手を差し出した。
「素晴らしい挨拶だったね。」
500人の全校生徒が見つめるステージの上で、
僕達はお互いを見つめ合いながら握手をした。
そして微笑んだ。
悲しみや苦しみを伝えるのはたやすいことだ。
でもそれだけでは同情や哀れみで終わってしまう。
笑いながら泣きながら心が交わればそれは共感につながっていく。
きっと未来につながっていく。
講演終了後わざわざ校長室まで来てくれた生徒がボールペンをプレゼントしてくれた。
僕のシャツとお揃いの色のボールペンだった。
それは藍色、僕の好きな海の色だった。
彼女はそのボールペンを僕の胸ポケットにさしながら微笑んだ。
やっぱり未来を予感させる微笑みだった。
(2017年11月21日)