木枯らし1号に背中を押されながら京都へ帰るのぞみに乗車した。
のぞみの車中ではやさしい紳士と隣り合わせだった。
通路側の僕は彼に伝えた。
「目が見えないので出入りの際はおっしゃってください。」
「そうですか、何かお手伝いできることがあったらおっしゃってください。」
彼は微笑みながらそんな言葉を返してくれた。
僕は安堵感に包まれて車中の時を過ごした。
そして東京での講座を振り返った。
4泊5日の研修が終わった。
僕は自分の担当科目を講義すればいいだけだがそれでも疲れた。
いい加減な僕の関わりでも疲れたのだから受講生は大変だっただろう。
皆疲労感もあったはずだがどの受講生も最後まで集中力は途切れなかった。
日本のあちこちから陸路で空路で集まった人達、
きっと指導者としての意識の高さがあったのだろう。
うれしい結果だった。
定員一杯の参加者だったが数的にはスタッフを加えても30名程度だった。
僕は講義をするだけではなく懇親会にも参加して皆さんと交流した。
出席番号19番の青森から参加していた秋元さん、
爽やかさが素敵な若者だった。
早速僕のこのブログを読んで感想をくださった桂子さん、
ハスキーボイスが魅力的な女性だった。
横浜の小林さん、年明けには一緒に仕事するかもしれないと思った。
千葉のあきこさん、ドトールでのモーニングタイムうれしかった。
皆さんと会話を重ね親睦を深めた。
でも例えば一か月後に再会したとしても、そして名乗ってくださったとしても、
僕はきっとすぐには判らないだろう。
見えないとはそういうことなのだ。
声だけで記憶するなんて不可能だ。
でも共に過ごした時間はまぎれもない事実だ。
心が触れ合ったのは確かだ。
僕を中心にして撮影した記念写真、僕が見ることはない。
でもきっと僕も笑っている。
皆と同じ方向を向いて笑ってる。
皆と同じ未来を向いて笑っている。
(2017年10月31日)