「6月になると綿毛が雪のように降って道が白くなるんですよ。」
ポプラ並木の道を走る車の中で同乗者の人達が教えてくださる。
「雲ひとつない真っ青な空ですよ。」
校舎の前で空を眺めながらボランティアの男性が伝えてくださる。
少し冷たくなってきている風が冬の始まりを予感させる。
授業で出会った高校生達の発音はやはり関西とは違う。
景色のない僕にも少しずつ北海道がささやき始める。
先生方とご一緒した夕食はジンギスカンだった。
乾杯!
やさしさが初対面の緊張を溶かしていく。
あたたかさが見えない壁をこわしていく。
黒い羊の話、スタッドレスタイヤの話、ユメピリカのお米の話、
いつの間にか僕も自然に道産子の輪の中にいる。
横に座ってくれた先生はその間もずっと僕の食事の手伝いをしてくださる。
さりげなさは昔からの友人のような感じだ。
コースの最後に出たシャーペット、いつもは手を出さない僕が食べてしまったのは雰
囲気だろう。
夕餉のひととき、皆で見つめたのは間違いなく未来だった。
明日は心をこめて北海道の高校生達に向かい合おうと強く思った。
(2017年10月20日)