道を歩いていたら突然草が顔に当たった。
サングラスをしていたから痛くはなかったけれど驚いた。
空中に草が浮いているはずはないから手を伸ばして探ってみた。
道沿いの石垣の間から生えた雑草だった。
周囲には他にはなかった。
たった一本だけ生えていた。
また顔に当たったら嫌だなと思って引っこ抜くために根元を探した。
石垣の小さな隙間から生えているのを知った。
発芽してから仕方なく真横に成長を始めたのだろう。
そして少し大きくなってからはお日様に向かったに違いない。
茎が空に向かって湾曲していた。
カッコいいなと思ってしまった。
引っこ抜こうとしていた僕の手の力が抜けた。
この酷暑の中、この条件で生きていくのは大変だろう。
そう思ったらとても愛おしくなった。
僕はリュックサックからペットボトルの水を出して根元の石垣に注いだ。
ちゃんとできたかは判らなかったが一生懸命にやった。
それから残りの水を飲み干した。
「お前も頑張れよ。」
僕は声に出してそうつぶやいて歩き出した。
僕自身も雑草みたいなものかもしれない。
しっかりとお日様に向かわなくちゃ。
(2017年8月27日)