体育館には1年生から6年生までの全校生徒が集まった。
保護者や地域の人達も来てくださった。
視覚障害者の話を直接聞くのは初めての人が多かっただろう。
僕は視覚障害というのはどういうことなのか、
何故そうなるのか、
どういうことに困るのか、
順序を考えながら話を進めた。
のんびりとゆっくりと話を進めた。
「僕達は動物に手伝ってもらって歩くこともあるんだよ。」
何の動物か1年生に尋ねてみた。
最初にゾウさんが出てきた。
サーカスのゾウ使いを想像したのかもしれない。
次はラクダさんだった。
月の砂漠の絵にあったかな。
どちらも乗り心地がいいだろうなと僕も思った。
それからクマさんも出てきた。
これはきっと森のクマさんだろう。
会場には笑顔が溢れた。
悲しみや苦しみや不便さや不自由さを伝えるのはそんなに難しいことではない。
でもそれだけが伝わってしまったら同情しか生まれない。
正しく理解してもらうことが大切だ。
共感はまさに共に生きていく社会につながっていく。
子供達は次の時代を創造していくのだ。
機会をくださった学校関係者に御礼を伝えてから最寄りの駅まで送ってもらった。
慣れない駅で電車を待っていたら若い女性がサポートしてくれた。
勘違いしてホームの反対にいた僕に気づいてくれたのだ。
電車に乗り込んで空いている座席まで誘導してくれた。
シートに腰を下ろして僕はさきほどの小学校での豊かな時間を思い出していた。
ゾウさんと答えてくれた子供達がいつかきっとこういう女性になってくれるだろう。
いや、ゾウさんやラクダさんをプレゼントしてくれるかもしれない。
そんな妄想を楽しんでいたらワクワクしてきた。
最近少し体力の低下を感じていたけれど、
まだまだ頑張りたいなと思った。
(2017年6月12日)