朝の雨はすっかりあがっていた。
バス待ちのわずかな時間にボランティアさんが周囲の景色を説明してくださった。
すぐ近くには田植が終わったばかりの田んぼがあった。
緑色のイネを思い浮かべた。
自然にその映像が蘇った。
きっと子供の頃毎日見ていた風景の中にあったからだろう。
緑色のイネが雨の中で生き生きとしながら育っていく姿は美しかった。
夏の太陽の下で大人になったイネには堂々とした雰囲気があった。
秋になると銀色に輝いていた。
実がはいるほどに首を垂れる姿は生きるということを教えてくれているようだった。
ふと今日出会った看護学校の学生達を思い出した。
夢に向かって育ち始めた時期の人達だったかもしれない。
教室には生き生きとした雰囲気があった。
僕は特別講義の180分、思いを込めて学生達に向かい合った。
科学技術は進歩していろいろなことを機械ができるようになってきている。
でも人間にしかできない部分があるような気がする。
そしてそれがひょっとしたら一番大切な部分なのかもしれない。
すくすくと成長した学生達がいつかどこかで誰かを支えてくれればいいな。
ふとそんなことを思った。
(2017年6月8日)