2003年の師走、僕はボランティアさんと京都駅近くの喫茶店で話をしていた。
彼女は出版関係で仕事をしていた人だった。
たまたま僕のメールの文章を読んでくれた彼女は本を書くということを僕に提案して
くれた。
本を書くなんて素人の僕には何もイメージすることはできなかった。
不特定多数の人が読むかもしれないということへの気恥ずかしさに、
僕の気持ちが硬直したのも事実だった。
それでも決心ができたのは「活字の力」への希望が膨らんだからだろう。
いざ始まるといろいろと大変だった。
まず自分自身が読むかもしれないという現実から逃れたかった。
結局、原稿を書いたらすぐに彼女にメールで送信し、
僕の履歴からは削除するという方法で取り組んだ。
その後の著書もこのブログも方法は受け継がれている。
僕の手元には何もないので自由と平穏が保たれているのだと思う。
2004年12月に「風になってください」がデビューした時専門家に尋ねたことがある。
「どれくらい売れたら成功と言えるのですか?」
その際重版という言葉を知った。
きっと出版社も専門家も勿論僕自身も無縁のことだと思った。
それが重版になってしまった。
たくさんの子供達が読んでくれたということが大きかったような気がする。
それから10年以上の時間が流れた。
どこの本屋さんでも注文も購入もできるけど、
メジャーではないし年数が経っているからほとんど店頭には置かれていない。
それでも少しずつ売れ続けているのはインターネットのせいだろう。
この時代の物流のしくみが後押ししてくれたことになる。
フェイスブックやラインやツイッターなどの口コミも現代の力なのかもしれない。
まさに「活字の力」は僕の活動の力となった。
この春「風になってください」はとうとう10刷りを迎えた。
社会の中にあるやさしさが起こした奇蹟だ。
春のぬくもりのようなやさしさだと思う。
心から感謝申し上げます。
ありがとうございます。
(2017年3月24日)