厳粛な空気の中で1人1人の氏名が読み上げられる。
それぞれの学生がそれぞれの声で返事をする。
それから壇上に上がっていく足音が聞こえる。
卒業証書を手にした学生達が僕達講師陣の前を歩いて席に戻っていく。
その足音にも個性がある。
僕は学生達の顔を見たことはないのだから、
氏名を聞いても足音を確かめてもピンとこない。
見えないと耳が良くなるかとか記憶力がいいのかと尋ねられることがあるがそんなこ
とはない。
僕なんか元々記憶力には自信がない上に職業柄出会う人数も半端じゃないのだからお
手上げだ。
それでも特別に支障はない。
それぞれの学生達に心をこめて拍手を送る。
おめでとう!
卒業式が終わって次の用事のために急いで会場を出ようとする僕に、
卒業生達が自分の氏名を名乗りながら挨拶をしてくれる。
僕が伝えたかったことを学生達はいつの間にか身に着けてくれていることに気づく。
新しい春、それぞれに次のステップで頑張ろうね。
頑張って笑顔になろうね。
僕も頑張ります。
(2017年3月15日)