四条通りを祇園に向かうバスはとっても込んでいた。
身動きに困るほどだった。
晴眼者の友人は僕の手を手すりに誘導してくれた。
僕は手すりを握って少しほっとした。
動き出したバスの中で僕は半分ぶらさがったような感じになっていた。
「この席に座ってください。」
ちょっと離れた場所から突然女性の声がした。
それから彼女は僕の白杖をそっと支えて座席に誘導した。
僕は何の問題もなく座った。
プロのガイドでも難しそうな場面だったがタイミングも誘導方法もスマートだった。
僕は感謝を伝えた。
そして隣で立っていた友人にありがとうカードを渡してもらった。
「修学旅行の引率です。」
彼女は中学校の先生らしかった。
僕の喜びは更に大きくなった。
先生と一緒にいた中学生達は一部始終を見ていたはずだ。
きっと先生のさりげない行動を素敵だと感じたに違いない。
僕達に声をかけるのはまだまだ勇気が必要な社会だ。
こういうシーンを見た子供達が大人になると楽しみだな。
途中でバスを降りていった中学生と先生に、
楽しい京都になりますようにと僕は心の中でつぶやいた。
(2016年12月16日)