研修会場でいろいろな仲間に出会う。
鹿児島から北海道から仲間が集う。
それぞれの人生が集う。
僕は講師という立場なのだけれど実際はいつも僕自身が学ぶ機会となっている。
今回出会った彼は42歳で失明したとのことだった。
企業の第一線で活躍していた彼はヨーロッパでの赴任を終えて帰国した。
ベーチェット病という病魔に突然襲われたのはその直後、
そして入院し三か月後に退院する時には両方の眼球は失っていた。
彼はそれからの人生を多くは語らなかったが、
ここまで来れたことを良かったと表現した。
淡々と話すどの言葉にも悲壮感はなかった。
僕が完全に光を失ったのがそれくらいの年齢だったのかもしれない。
どこかでこんな話を耳にした人はお気の毒にと思うだろう。
かわいそうにと感じるのかもしれない。
それはきっと、自分がその運命と向かい合ったらどうだっただろうかとイメージでき
るからなのだ。
だからその思いの出発はやさしさなのだろう。
ただ実際に彼と話し終えて僕の心に生まれてくるものは同情でも哀れみでもない。
人間が生きていく姿への感動なのだ。
キラキラと輝く人間の命の美しさに胸が震えるようにさえ感じるのだ。
「ヨーロッパの風景を記憶していますか?」
僕は若い頃歩いたイタリアの街並みを思い出しながら尋ねてみた。
「うん、しっかりと憶えているよ。」
彼は静かに笑った。
(2016年12月12日)