ドラッグストアで買い物をしていたら、
背中越しに娘さんとお母さんらしき人のヒソヒソ声が聞こえてきた。
僕は気にも留めずに目的の栄養ドリンクを探していた。
「さっきから松永さんの方を見ておられますよ。お知り合いではないですか?」
隣にいたガイドさんが僕に伝えてくれた。
僕が振り返るとお母さんらしき人が話し始めた。
「松永さんですね。娘から話を聞いていました。
学校から帰ってきてたくさん話してくれました。」
内容まではおっしゃらなかったが十分に意味は伝わってきた。
それからその娘さんが学校名と氏名を名乗った。
確かに僕が福祉授業で訪ねた学校だった。
うれしそうな声だった。
「憶えていてくれて、声をかけてくれたんだね。ありがとう。」
僕はリュックサックから点字の名刺を取り出して彼女にプレゼントした。
福祉授業や講演で学校に行った時、
僕は子供達に心をこめて話をする。
一生懸命話をする。
そしてそれを受け止めてくれた子供達が家族に伝えてくれることがある。
子供から話を聞いたというお母さんやお父さんに時々出会う。
伝える力、小さな力かもしれないけれどきっと未来につながっていく。
別れ際のお母さんと娘さんの笑顔が今日もそれを教えてくれていたようだった。
(2016年11月28日)