バスターミナルから駅の改札口まで続く通路、
僕はいつものように点字ブロックを手がかりに歩いていた。
「阪急の者ですがお手伝いしましょうか?」
僕は驚いた。
そこは駅の近くだけれど構内ではなかった。
構内で声をかけてもらうことは時々あるが、
その通路では初めてだった。
阪急のとおっしゃったがあくまでも一人の通行人としての行動だった。
僕は改札口までのサポートをお願いした。
たった数十メートル、駅員さんの肘を持たせてもらって幸せな気分で歩いた。
改札口でお礼を伝えてそこからは乗車予定のホームに一人で向かった。
ホームで電車を待つ時間も気持ちは豊かだった。
電車が到着していつものように慎重に乗り込んだ。
間もなく乗客の一人が席を譲ってくださった。
感謝を伝えて座った。
目的の駅に着いて歩き出したら、また別の方が声をかけてくださった。
桂駅から烏丸駅までたった10分ほどの間に3人のサポートを受けたことになる。
一日中歩いても声がかからない日があるのも事実だけれど、
声がかかると不思議とそれはつながっていく。
どうしてかは判らない。
やさしさは連鎖していくのかな。
先日、小学校で子供に尋ねられた。
「目が見えなくなってから、いいことってありますか?」
僕は笑顔で答えた。
「目が見えている頃の何倍もやさしい人に出会えるね。それは幸せだよね。」
やさしい人に出会ったら笑顔になる。
笑顔になると声もかけてもらいやすくなるのかもしれない。
そうやって連鎖していくのかな。
(2016年10月5日)