職業はと尋ねられて戸惑うことがある。
福祉の専門学校と大学の非常勤講師をしているが、
それは週に二日だけだ。
いわゆる職業には程遠い状態だ。
それでもいつの間にかスケジュールは埋まっていく。
講演だけで年に100回くらいはあるのかもしれない。
僕達のことを一人でも多くの人に正しく理解して欲しい。
未来への種蒔きがライフワークだと思っている。
そう願っているのだからとても有難いことだ。
僕の活動を支えてくれる収入のひとつになっているのも間違いない。
でも依頼がなかったら成立しない。
知名度が高いわけでもないし障害というテーマもマイナーなものだ。
それでもこうして活動が続けられているのはたくさんの支援者のお蔭だ。
今日は京都府久御山町の民生委員研修会での講演だった。
もう何年も前に福祉の専門学校のオープンキャンパスで彼女は僕と出会った。
初めて出会った全盲の人間が教室を自由に歩き授業をした姿が衝撃的だったらしい。
それから専門学校に入学して僕の講義も受けた。
卒業して今は福祉の仕事で活躍している。
いつか僕を手伝いたいとずっと思っていたとのことだった。
民生委員をしておられる母を説得し今回につながった。
講演が終わって彼女のお気に入りのレストランに向かった。
前菜からコーヒーまで贅沢なランチタイムだった。
学生時代に始まって現在の職場まで話はつきなかった。
座席への誘導も食事のサポートもほぼ完璧だった。
レストランを出て駐車場に向かいながら彼女が急に立ち止まった。
「赤とんぼです。」
彼女の屈託のない笑い声がこだました。
僕達は一瞬に秋に包まれた。
「またいつか、お手伝いさせてくださいね。」
純粋な言葉だった。
彼女の言葉を聞きながら、
いつの間にか僕が教えてもらう立場になっていることを知った。
支援してくださる人達にあらためて感謝しながら、
またこの秋も頑張って活動を続けたい。
(2016年9月15日)